はじめに
音楽制作の世界に、AIという新しいツールが本格的に登場してきました。メロディを作ったり、歌声を生成したり、場合によっては「こういう感じの曲を作って」とテキストを入力するだけで楽曲が完成する時代。
でも最近、そんなAI音楽サービスをめぐって大きなニュースが飛び込んできました。アメリカの大手音楽レーベル3社(ユニバーサル、ソニー、ワーナー)が、AI音楽生成サービス「Suno」や「Udio」を訴えたというのです。
その理由は「著作権侵害」――え? 学習させるだけでもアウトなの?
DTM初心者さんや、趣味で音楽制作をしている方にとっては、ちょっと難しく感じるこの話。でも実は、これからの音楽とAIの付き合い方を考える上で、すごく大事な問題なんです。私自身もDTMで音楽を作っているクリエイターとして、この問題をしっかり考えたいと思っています。
そこでこの記事では、できるだけわかりやすく、そして制作に関わる視点から、今何が起きているのか、AIの学習ってホントに悪いことなのかを考えていきます。
1. Sunoってどんなサービス?
Sunoは、ざっくり言えばAIが自動で音楽を作ってくれるサービスです。ユーザーが「ポップなメロディに、切ない歌詞で…」みたいな指示(テキスト)を入力すると、数秒でちゃんと歌声まで入った楽曲が完成します。
驚くのは、そのクオリティ。一昔前の機械的なBGMとは違って、ちゃんとした“人間っぽい”曲ができるんです。しかも、ジャンルもメロディも歌詞もコントロールできる。DTMで地道にコードを打ち込んでた人には、ちょっと衝撃的ですよね。
Udioも同様に、ユーザーの指示に応じてAIが曲を“生成”するサービス。最近では、プロ顔負けの仕上がりの曲もSNSで話題になっています。
2. 今起きている訴訟のポイント
2024年6月、アメリカの3大レーベルがこのSunoとUdioを著作権侵害で訴えました。
理由は「AIの学習に著作権のある楽曲を無断で使った」というもの。
つまり、AIをトレーニングするために、昔のヒット曲や人気アーティストの曲を勝手にコピーして学習に使った。それが「著作権侵害だ!」という主張です。
たとえば、AIが「マライア・キャリー風のクリスマスソング」を生成したとき、それが本家そっくりになってしまえば、「これはもうパクリでは?」という疑念もわいてきます。
レーベル側は、1曲あたり15万ドル(日本円で約2000万円)レベルの賠償請求をしています。もし数千曲が対象になれば…とんでもない金額です。
3. AIに“学習”させることは著作権侵害なの?
ここが今回の核心です。
「AIが曲を“学ぶ”だけで著作権侵害になるのか?」
普通に考えると、「人間が昔の曲を聴いて学ぶ」のは問題ありませんよね。私たちもビートルズを聴いてインスピレーションを得たり、コード進行を参考にして曲を作ったりします。
それとAIの“学習”は何が違うのか。実はこの違いがすごくグレーなんです。
AIの場合、曲を“聴く”だけじゃなくて、一時的にデータとして複製するプロセスがあります。ここで著作権に引っかかる可能性があるわけです。
でも、その複製って「新しい音楽を生み出すため」なんですよね。Suno側は「AIは既存曲を再生するわけじゃない。まったく新しい曲を作っているだけ」と反論しています。
実際、生成された曲はオリジナルに似ている場合もあるけど、完全コピーではありません。そして学習の段階では、元曲をそのまま配信したりはしていない。
このへんの「グレーゾーン」をどう判断するかが、今まさにアメリカで問われているわけです。
4. クリエイターの立場から思うこと
私もDTMで曲を作る一人として、このニュースには複雑な気持ちです。
「自分が苦労して作った曲が勝手に学習されるのは嫌」という気持ちも正直あります。でも一方で、「AIに曲を学ばせること自体がNGになったら、創作の自由がすごく狭くなる」とも思います。
たとえば、私たちが子どもの頃から聴いてきたJ-POPやアニメソングの感覚って、無意識に曲作りに出るじゃないですか? それとAIの“学習”って、かなり近いと思うんです。
しかも今のAIは、「クリエイターの補助ツール」として使えば、めちゃくちゃ強力。たとえば、
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コード進行のアイデアをAIに出してもらう
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メロディの参考になるパターンを出してもらう
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歌詞の叩き台をAIに書かせて、そこから磨く
みたいな使い方は、すでに私もしています。時間の節約にもなるし、自分の発想にないものに出会えて面白いんです。
でも、もし「学習禁止」が広がってしまえば、こういうAIツールもどんどん作れなくなってしまう。創作の可能性が狭まってしまうことが、むしろ一番怖いなと思っています。
5. 音楽とAI、未来はどうなる?
今回のSuno訴訟は、きっとしばらく続くと思います。でもここから先は、たぶん「どっちが勝つか」じゃなくて、
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AIと音楽業界がどう折り合いをつけるか
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クリエイターやユーザーにどう還元されるか
が重要になってくるはずです。
たとえば「AIが学習に使った分のライセンス料を払う」とか、「生成された曲に似てる元曲があれば還元する」とか、共存の仕組みが必要なんだと思います。
そして、私たち一人ひとりのクリエイターも「どうAIと付き合うか」を考えていく必要があります。
AIを全部拒否するのも違うし、全部丸投げするのも違う。**“補助ツールとして使いこなす”**という視点が、これからの時代にはきっと大事になるんじゃないでしょうか。
おわりに:DTM初心者さんへ
AIと著作権の話って難しい。でも、DTMを始めたばかりの方にとっても「将来、自分の曲がどう扱われるか」に関わる大事なテーマです。
今回のSuno訴訟がどう決着するかで、AI音楽のルールが大きく変わるかもしれません。だからこそ、自分も「どんな音楽を作りたいのか」「AIをどう使いたいのか」を考えながら、楽しく続けていきましょう!
あなたの曲にも、AIにも、未来がある。