空白の273秒
ジョン・ケージ(1912-1992)という作曲家がいた。
アメリカの作曲家で音楽家、作曲家、詩人、思想家、キノコ研究家という肩書を持つ。変わってる!
活躍した年代からして「現代音楽」の作曲家と分類される。
もっとも有名な作品は「4分33秒」(1952)という作品。
ピアノ作品で、演奏者がピアノの前に座り、
第1~第3楽章の楽譜をひらくが、、、、、、
4分33秒、、、何も演奏しないのだ。
これが作品?
ピアノ作品?
作家のコンセプトはこうだ。
音楽というのは作曲家が作り演奏家が演奏して、
聴衆がその音をありがたく聞くものではない。
聴衆自らが聞こえる音が「音楽」なのである。
すごく哲学的であるが、へ理屈にも聞こえる。
このコンセプトは私の敬愛する、故・桂枝雀さんと通じるところがある。
枝雀は生前、「究極の落語」についてこう話していた記憶がある。
私が高座にあがる。
お客さんをぐるっと見渡す。
でも何も話さない。にっこり笑ってまた客席を見渡す。
話さなくてもお客はくすくす笑い始める。
まだ何も話さない。
そのうちに客席は大爆笑になり、私は高座を降りていく。
一言も私は言葉を発しないが、お客は満足する。
これが私の理想の落語である。
やっぱり天才の考えは似通るのかなあ?
ちなみに「4分33秒」はなんで4分33秒なのか?
35秒でも4分ちょうどでもいいんじゃないの?
「4分33秒」を秒に換算すると、273秒になる。
273という数字は、「絶対零度」 -273℃からきているらしい。
絶対零度的な、何も存在しない音楽。
この発想も素晴らしいなあ。